ここでは「国勢調査を見直しを求める会」の、国勢調査に対する見解を示したいと思います。
<国勢調査に対する見方>
求める会は、一つのまとまった考え方で統一されているわけではありませんが、これまでの活動の中で出されてきた主な意見を以下にあげてみます。
<項目>
<a> 国勢調査はなんのため?
1、人口調査ならば住民基本台帳で充分
2、人口調査としては調査項目が多すぎる
<b> 個人情報は保護されているの?
<c> 調査個票は目的外利用されている。
<d> 調査員によるプライバシーの侵害
ホットラインによせられた苦情の例
<e> 総務庁との交渉を続けています
<a> 国勢調査はなんのため?
1,人口調査ならば住民基本台帳などで充分。
統計法第4条第1項には国勢調査は「人口に関する全数調査」であると記されています。これに対して人口調査ならば住民基本台帳と外国人登録とを合計すれば充分ではないかと考えられます。そうすれば、530億円のお金と約百万の人手が節約できますし、調査現場のトラブルも解消します。国勢調査が実地調査方式(調査員が実地におもむくやり方)、住民基本台帳が業務データ活用方式(役所の記録を活用するやり方)というちがいはありますが、総務庁側の研究でも総数はほとんど同じ、という結果がでているのです。
2,人口調査としては調査項目が多すぎる
今回の小規模国勢調査は17項目から成り立っています。氏名、家計の収入、住宅の施設、床面積、学歴、勤め先、仕事内容などとても人口調査とは言えない内容まで含まれています。
こうした調査は一部抽出法の調査(一部の対象者を選び出して行う調査)で間に合うのではないか。「調査は必要最小限度の個人情報」に限定すべき、というのが原則なのです。
<b> 個人情報は保護されているの?
● まず、氏名・電話番号に注目しましょう。当局はあとで記入内容について本人に確認するため、と説明していますが、各個人の調査票は、調査対象者の名簿(住所も記された世帯名簿)と共に総務庁まであげられますし、調査票は3年間保存されるのです。
● 調査結果は統計(数字)の形ではあれ、一般に公開。磁気テープ、マイクロフィルムなどの形で販売されています。「IT革命期」と言われる今日、そのデータから個人データを解析してゆくことは可能と考えられます。
90年から一調査区(50〜60世帯)を分割し、基本単位区(20〜30世帯)ごとにデータをまとめることになりました。それ以来この単位区は固定し情報の入れ物になりました。20〜30世帯毎に全データを解析すれば、ほぼ個票は再現できそうです。その上各省庁のデータも国勢調査をデータベースにしています。
民間情報会社などは、この上さらに他のルートからの情報を集積しています。
<c> 調査個票は目的外利用されている。
国勢調査票の左上の所をちょっと見てみると「この調査票は、統計以外の目的には使用しませんから、ありのままを記入してください」と明記されています。でもこれで安心しないで下さい。実はこれは真っ赤なウソなのです。
確かに統計法にも「調査票を、統計上の目的以外に使用してはならない」とあります。(第15条第1項)
ところが同じく第15条第2項には「前項の規定は、総務庁長官の承認を得て目的を公示したものについては、これを適用しない」とされており、例外を認めているのです。
<d> 調査員によるプライバシーの侵害
国勢調査のたびに問題になるのがこれです。元より調査員の方、全てが悪質というわけではありません。しかし、何しろ80万人もの調査員が動員されます。一部の人であれ、その数は決して無視できません。
求める会が毎回開設するホットラインでは調査員、とくに“顔見知り”調査員の言動に関する訴えが大半を占めています。
以下にその例をあげてみましょう。
●調査員が顔見知りなので、その人だけには家の内容をしられたくない。どうしたらいいだろうか。封したりすると、後々その人との間がきまずくなってしまう。(多数)
●調査員がおしゃべりで有名な人。(多数)
●調査員が町会や自治会の役員で、その人に逆らうと大変なことになる。(多数)
●知人が調査員をしているが「あの家はああだこうだ」と話しているのを聞き、なるほどこういう形でプライバシーが洩れていくのかとよくわかった。(台東区)
●表札はひとつだが事実婚、そのことを近所にはしられたくない。(横浜市)
●失業中だが、そのことを知られたくない。何で職業を調べるのか。(多数)
●調査員が酒を飲んで来て、ドアをドンドン叩く(札幌市)
女だけの世帯に夜遅く調査員が来て、ドアを開けなかったらドンドンと叩かれた(同様多数)
●密封して出したら目の前で破られた。
どうせ開けるのだから、封するなと言われた。
自治会の役員が全部開封しているのを目撃した。(同様多数)
<総務庁との交渉を続けています>
● 求める会は去る2000年5月9日と7月4日の2回にわたって交渉を行っています。話し合いの内容は
(1)国勢調査の基本的なあり方について
(2)実際の調査時における問題点
の2点です。
(1)については上の<a><b>でご説明したような点ですが、総務庁側は国勢調査の現在の形を正当化する発言をくり返すのみでした。
(2)の調査現場における調査員と住民のトラブルはさずが敏感になっていました。そこで、当局は今回「世帯のプライバシーを守るために」というマニュアルを調査員に配布して、指導しています。
また、封入(密封)のためのシールを作って各世帯に配布することにしています。シールで密封することによって調査員に記入内容が見られてしまうという心配をなくし、住民の協力を得ようと努めているのです。
●また、調査実施前後には、総務庁に苦情相談のための電話を30台設置し、全国からの電話を受けてきたということも明らかになりました。
そこでわたしたちは、総務庁がホットラインを敷設することをもっと全国的に明らかにする、たとえば「調査票の記入のしかた」という各戸配布の説明書に電話番号を明記せよ、と要求しましたが、受け容れませんでした。
●各都道府県・市町村でも苦情相談窓口を開くよう指導している、とのことでした。
わたしたちの属する各自治体にも相談窓口を必ず設けること、しかも設けていることを住民に公報などで周知徹底するよう働きかける必要があると思います。
<第3回総務庁との話し合いのご報告>
2000年8月末に珍しく総務庁国勢統計課から、当求める会に対して話し合いたいとの申し入れがありました。当会のホームページについて5点にわたってご相談したい、とのことでした。
そこで話し合いは去る9月6日、総務庁舎で行われました。当局側のいう5点はいずれもこの「国勢調査の見直しを求める会」のページに関するものでした。
以下はその話し合いの要旨です。
(1)
<総務庁>:
「<a>国勢調査はなんのため? 1,人口調査ならば住民基本台帳などで充分」の最後の行:「総務庁側の研究でも総数はほとんど同じ、という結果が出ているのです」について。
同研究(「国勢調査による人口と住民基本台帳による地域別人口の差違について」)は地域別人口に関するもの。
<求める会>:
ご趣旨はわかっている。
(2)
<総務庁>:
ホームページでは「とても人口調査とは言えない内容まで含まれています」とあるが、統計法第4条で定めた「人口に関する全数調査」には行政上必要性のある項目を含んでおり、各項目は統計審議会の審議を経て国勢調査令で定めている。国連の人口調査に関する勧告も社会的・経済的属性を含めている。
<求める会>:
22項目は全て本当に必要か?調査は必要最低限度の個人情報に限定すべきだ(OECDプライバシー保護についてのガイドラインの8原則の1つ「収集制限の原則」)。どうしても必要な事項はアメリカの人口調査のように、全数調査ではなく一部抽出法で。
(3)
<総務庁>:
<b>「個人情報は保護されているの?」で「各個人の調査票は調査対象者の名簿と共に総務庁まであげられます」としているが、氏名・電話番号は基礎データの磁気テープには入れていない
<求める会>:
でも個票が番号(調査区番号+世帯番号)で入っている。(番号と氏名の対照表である世帯名簿も上げられている)
(4)
<総務庁>:
「(統計)データから個人データを解析してゆくことは可能」「基本単位区ごとに」「全データを解析すればほぼ個票は再現できそうです」については、人口、世帯数、年齢(3階層分類)についてのみ基本単位区ごとに統計データ化している。その他の項目は「町丁・字単位」に処理している。
<求める会>:
そのあたりはこちらももっと検討してみるが地図情報システムで個人情報がわかる地域もある。
(5)
<総務庁>:
「(c)調査個票は目的外利用されている」について。目的外使用を定めた国勢調査令第15条の2、は第14条の「指定統計調査の結果知られた人、法人又はその他の団体の秘密に属する事項については、その秘密は保護されなければならない」の規定を受けると解釈される。
<求める会>:
解釈はそうであるにせよ、目的外使用は明らかで、実態として個票はこれまでどれ位の数が何に使用されてきたのか、もっと情報公開すべきだ。
●上にまとめた「第3回話し合いの報告」について、総務庁側から補正・修正(紫で表示)の要望がありました。これに対する求める会のコメントと合わせて次に載せます。
(1)
<総務庁>:
「<a>国勢調査はなんのため? 1,人口調査ならば住民基本台帳などで充分」の最後の行:「総務庁側の研究でも総数はほとんど同じ、という結果が出ているのです」について。
地域別人口に大きな差のあることを御認識いただきた。住民基本台帳に基づく登録人口では、住民登録の変更をせずに移動する者(学生等の若年者、単身赴任者等)が多く、地域別人口・世帯の実態を正確に把握することができないため、国勢調査の結果が必要とされている。
<求める会>:
住民基本台帳と国勢調査による地域別人口には過疎・過究により地域によって差があるのは事実です。
私たちは、必ずしも住民登録による人口の方が有効という考え方に立っているわけではなく、国勢調査に代わる一つの選択肢として検討に値するとしているのです。
ただ、例えば、選挙人名簿が住民基本台帳から作成されるため、公職選挙法には同台帳による人口の方が有効ではないか、ほかに納税者も同台帳に記載されている、などの点も施策のデータとして有効ではないかとする意見もあります。
(3)
<総務庁>:
<b>「個人情報は保護されているの?」で「各個人の調査票は調査対象者の名簿と共に総務庁まであげられます」としているが、氏名・電話番号は基礎データの磁気テープには入れておらず、別の目的で使用することはない。
<求める会>:
でも個票が番号(調査区番号+世帯番号)で入っている。(番号と氏名の対照表である世帯名簿も上げられている)
(4)
<総務庁>による訂正
<総務庁>:
「(統計)データから個人データを解析してゆくことは可能」「基本単位区ごとに」「全データを解析すればほぼ個票は再現できそうです」については、基本単位区別結果を用いても不可能であり、また小地域統計の結果公表に際しては、秘匿措置を講じている。なお人口、世帯数、年齢(3階層分類)についてのみ基本単位区ごとに統計データ化している。その他の項目は「町丁・字単位」に処理している。
<求める会>:
そのあたりはこちらももっと検討してみる。(地域情報システムで個人情報がわかることはありませんので、この部分は削除していただければ幸いです。<総務庁コメント>)
<求める会>によるコメント
センサス・マッピング・システム(CMS)は90年から設定された「基本単位区」に関する情報を高度利用するためのシステムである、と統計局はいっています(総務庁統計局統計調査部国勢調査課「国勢調査とセンサス・マッピング・システム(CMS)『統計』1994年10月号 日本統計協会)
総務庁統計局では、「国勢調査の調査区(基本単位区)地図を基礎として構成」したものを、とくにCMSと呼んでその開発を新しいテーマにしています。
国勢調査の集計結果から、各基本単位区別結果を抜き出し、これと基本単位区・調査区の図形情報をつなぎ合わせ、「「統計地図」として画面や出力用紙上に表示することにより、視覚化した統計情報にすることができ」ると説明しています。通常1枚の地図に10〜20程度の調査区が入り、全国では4万6000枚になるとのことです(前喝「統計」1994年10月号)<「国勢調査を調査する」P38より引用>)
(5)
<総務庁>:
「(c)調査個票は目的外利用されている」について。目的外使用を定めた国勢調査令第15条の2、は第14条の「指定統計調査の結果知られた人、法人又はその他の団体の秘密に属する事項については、その秘密は保護されなければならない」の規定を受けると解釈される。
また、国勢調査においては、これまでも犯罪捜査や税務資料として国勢調査の調査票が使用されたことはなく、今後もあり得ない。
<求める会>:
解釈はそうであるにせよ、目的外使用は明らかで、実態として個票はこれまでどれ位の数が何に使用されてきたのか、もっと情報公開すべきだ。 |